将軍の都の客人/Amy Stanley

将軍の都の客人/Amy Stanley

サブタイトル:「越後の寺娘・常野、江戸を訪う」

江戸後期の1804年に越後の小さな村の寺に生まれ、1853年に江戸で亡くなつた女性の一生を追ったノンフィクション。その手法は生家の寺に残された家族と交わした130通の手紙を中心に、周辺資料、歴史資料を丹念にたどり、その波乱万丈の生涯を描き出しています。

物語の主人公、常野は3度結婚するも離縁、あてもなく実家を出奔し江戸へ出て4度目の結婚、これにもうまくいかず一度は実家に戻るもまた江戸へ戻ることを選んでいます。彼女自身の性向があったとはいえ、この時代の地方の女性の行動としては、まさに自由奔放、家族や周辺の人達にとっては“厄介な”存在だったことでしょうが、江戸時代の地方の農村に生まれた女性について持っていたイメージを改めさせられました。また江戸に生きる庶民のリアルな生活をみることができました。

この作品は想像もつかないほどの労作だと思います。作者は米国人の歴史学教授、日本人でも専門分野の人でなければ読み解きにくい肉筆くずし字の古文書を解読し、同時代の史資料を集め、作者の想像力でひとつの物語に仕上げた苦労は大変なものだったと思います。2020年に米国で出版されたこの本は国内では今年の出版ですが、すでに中・韓・独・露など多言語に翻訳されている世界的話題作。今年のイチオシの一冊です。

2026年3月16日 第1刷 発行:㈱みすず書房
Amy Stanley (エイミー・スタンリー) 著 原直史 監訳 石垣賀子 訳

原著:Stranger in the Shogun’s City
2020 全米批評家協会賞(伝記部門)受賞
2023 PEN/ジャクリーン・ボグラッド・ウェルド伝記賞 受賞
2023 ピュリッツァー賞(伝記部門)最終候補作