高瀬庄左衛門御留書/砂原浩太朗

高瀬庄左衛門御留書/砂原浩太朗

普段読むのはミステリーか経済小説のようなノンフィクションものが多くなっていましたが、珍しく時代小説を読んでみて、いい小説を読んだという思いで満たされています。

下級武士の暮らしや小藩でのお家騒動などをはさみながら、各所に施した伏線が収束してゆく精緻な構成も心地よいですが、頁を読み進めながらながら感じるのは「静謐」なストーリーの流れ。静謐なんて日常的に滅多に使う言葉ではないですが、この小説の読後感には最も適した言葉かと思いました。テンポよく進む小説もあれば、この作品のようにゆったりとした時間の流れに任せるのもいいものです。

時代ものは読むことがあまりないので、文中に書かれた時間や金額の程度や言葉遣いなど、わからない表現も多くその都度メモして読み続け、あとで検索して使ってみたくなる日本語表現も知ることもできました。

読み終えて、この作品を映像化するなら主人公 庄左衛門のキャスティングは松重豊さん以外ないかなとも思いました。

2021年1月18日 第1刷 2021年3月10日 第3刷
発行:㈱講談社
第9回野村胡堂文学賞 第15回舟橋聖一文学賞 第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」 受賞作