此の世の果ての殺人/荒木あかね

此の世の果ての殺人/荒木あかね

最近のニュースで2024年末に発見された小惑星が、8年後の2032年12月22日に地球に衝突するおそれがあるという推定をESA(ヨーロッパ宇宙機関)が発表したというのがありました。ESAによるとこの小惑星「2024 YR4」の直径は40メートルから90メートルで、発表時点では2.2%の確率で地球に衝突する可能性があるとのこと。その後一時は3.1%まで高まっていた衝突確率も最新のNASA(アメリカ航空宇宙局)の発表では0.28%まで低下しています。これからも観測結果が増えて軌道をより正確に計算できるようになれば、リスク予測は着実に低減してゼロになると予想されているようです。

このニュースで思い出したのは前に読んだ荒木あかねさんの『此の世の果ての殺人』というミステリージャンルの小説でした。小説は小惑星「テロス」が日本に衝突する67日前から始まります。

多くの人が日本から逃げ出し、毎日千人以上の人が自殺するなどパニックに陥った日本。そんな大混乱のなかで発見された他殺死体、謎を解き犯人を追い詰める二人の女性、こんな極限状態のなかで…。そして最後、二人はテロス衝突予定の3時間前に終末の地へ…。

この小説の読後感は究極の状況設定、いたるところに自殺死体、殺人(大量殺人も)などがあっても、なにかシュールで不思議なもので、犯人との対峙が終わったあと、終末の地へと向かう最終章まで悪くない読後感でした。展開のテンポの良さと、主人公二人のキャラクターがよく作られていたからかもしれません。

2022年8月22日 第1刷 発行:㈱講談社
第68回江戸川乱歩賞 受賞作